今週の一言 第十一回前回に引き続き テーマは自分
2023/06/26
『「自分」の壁』 養老孟司 著 新潮新書 より引用
「こういう話をすると、「それでは世間や他人の顔色をうかがってばかりの人間だけになってしまうじゃないか」という人がいるかもしれません。「それでは社会が前に進まないではないか」と。 でも、そんな心配は要りません。 最初に述べたように、世間に押しつぶされそうになってもつぶれないものが「個性」です。 結局、誰しも世間と折り合えない部分は出てきます。それで折り合えないところについては、ケンカすればいいのです。それで世間が勝つか、自分が勝つかはわかりません。でも、それでも残った自分が「本当の自分」のはずです。
「本当の自分」は、徹底的に争ったあとにも残る。むしろ、そういう過程を経ないと見えてこないという面がある。最初から発見できるものでも、発揮できるものでもありません。
日本の伝統芸能の世界は、そのことをよく示しています。入門した弟子は、まず徹底的に師匠の真似をさせられます。「とにかく同じようにやれ」 その過程が10年、20年と続きます。 そんなふうにしても師匠のクローンをつくることはできません。どこかがどうしても違ってくる。その違いこそが、師匠の個性であり、また弟子の個性でもあります。徹底的に真似をすることから個性は生まれるのです。
弟子入りの最初の段階から「個性を伸ばせ」などと言っても意味がない。それは伝統芸能を学んだことがない人でも、ピンと来るなではないでしょうか。
伝統芸能の道に進む人で、最初から我流を通そうという人はさすがにいないでしょう。ところが、困ったことに他の分野では、そういうことが平気で行われています。
たとえば学問の世界がそうです。研究者の世界では、ひたすら「オリジナリティ」を求められます。嫌というほど「オリジナルな仕事をしなさい」と言われるわけです。「個性を発揮せよ」と同じことです。(中略)
結論は、そんなオリジナリティを求めても仕方がない、ということでした。むしろ世間と折り合うことを知る。世間並みを身につける。それでもどこか変なところが残れば、それが個性なのです。「いいやつだけど、あいつのあの部分だけはしょうがないんだよね」と世間が言ってくれるようになれば、認められたということでしょう。」
個性とは何か?を考えさせられた文章でした。自分とはなにかと。多くのことを学んだ気がした。二回に分けて、自分について考えてみました。
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